魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2026年4月10日
Column #112

「青くて若いも捨ててはいけない」昔から日本で賞味されてきたメジ

「メジ」と呼ばれる若いマグロ

桜が散り、そろそろ新緑の匂いを風がはらむ頃。元気な魚がやってくる。「メジ」と呼ばれる若いマグロだ。高級品として知られるクロマグロの若魚を本メジ。キハダのそれをキメジ。メバチは体がずんぐりしているのでダルマと呼び、時季が来れば待ちどおしく、昔から日本では賞味されてきた。

大きなマグロだけでなく若いメジにも味わいありとする歴史は日本の食文化ではあるが、昨今の一部の論調として、大きくなってから獲(と)れば値段も高いのだから小さいのを食うのは不合理であるとする説もある。しかし、そもそも日本の風土に根差した漁業とは、〝来るものを獲る〟かつ〝分け隔てなく食う〟であって、その習慣で旬という感覚も生まれ育ったのだ。いつだったか欧米の資源学者が日本人がシラスを食っているのを見て、これでは日本に魚がいなくなると言ったことを記憶しているが、それは、自然界に対する見方と付き合い方の違いであり、海環境の違いでもあるので、観察眼不足の的外れな意見といえよう。〝獲る食う〟と〝獲らない食わない〟は、0か100ではなく、様子をつぶさに観察しながら獲り方や食い方を適切に工夫、加減する多段階のグラデーションが、日本方式なのだ。

さてメジであるが、キメジとダルマは初夏と秋、本メジは冬、というのが通念であったが、近頃の海の変化やクロマグロに偏った資源管理によって、獲れる時季がダラダラと長くなってきた。人為によって他の魚やイカを食いまくるマグロが増えたなら、当然間引かねばならない。設定された漁獲枠が少なすぎて、海には過剰なマグロたちがのさばっている状態なので、大いにその身を賞味すべきと心得よう。

身なめらかにして、よく嚙(か)んで味と香りが分かってくる質なので、ぶつ切りがよい。血の気や脂が多い直球味の大マグロは数切れでよいが、若いマグロは一本買いを求めておなかいっぱい食べるのが真骨頂。これぞ初夏の大人味だ。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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