魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2021年1月22日
Column #049

何者かあらんやサーモン席巻の時代

福井県の「ふくいサーモン」(全国漁業協同組合連合会提供)

最近の報道によると、我が国の魚消費量のトップは、マグロ、ブリ、エビ、イカを抜いてサケだそうな。しかし、ここ数年は加速する海水温の上昇でサケやマスは不漁のはずだがこれいかに。これを補っているのが本日のお題「サーモン」なのである。これは何者か。直訳すればサーモンはサケ、マスはトラウトであって別物なのであるが、ここ20年の間に、養殖されたサケ・マス類は全てサーモンと呼んでよいこととなってしまい、トラウトサーモンといったどっちやら分からん名前も登場してややこしい。

そもそも日本人がこの言葉になじみ始めたのは二十数年前、ノルウェーが海で大きくしたニジマスと大西洋サケを大量に日本に売り込んだのが始まりだ。当時、日本では毎年秋に川を上ってくるシロザケ、北方で潤沢に獲れるベニザケ、春に定置網に入るカラフトマスやサクラマスもあり、その味に国民は満たされていた。しかし、これらはアニサキスなどの有害寄生虫の危険があることから冷凍しない生食は禁じられていた。そこに養殖なので生で食べられるサーモンが登場し、時を同じくして増えてきた回転寿司に乗っかって、グングン勢力を強めてきたというわけだ。

ノルウェーが引き金となって、天然ではありえない豊富な脂をのせたサケ・マス類に日本人の舌が慣れるにつれ、日本産サーモンもかなり増えた。知名度の高いギンザケをはじめ、ニジマスとの掛け合わせ、サクラマスなど、サケ・マス混交、浜でも内陸でもサーモンの銘柄は増え、こぞってしのぎを削っている。

ただしここに一点の事実がある。養殖というからには人為であって、当然、どのような「環境」「餌」で育ったかが味の決め手。脂っこいのが当世の流行ではあるけれど、サーモンとサケ・マス、養殖と天然をちゃんと味わい、使い分けてこそ、健全な我が国の文化といえると思うのだ。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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