アサリのトマトソースパスタ「ボンゴレロッソ」
アサリの旬を迎えるこの時期、ゴールデンウイークに潮干狩りに行ったものの、思うような収穫がなかったというSNSの投稿が散見された。昭和の時代は10万トンを超える漁獲量があったアサリだが、近年は1万トンを割る。減少の原因は環境の変化など地域によってさまざまだが、バケツにアサリをいっぱいにして帰る風景は、昭和の懐かしい風物詩になってしまった。
採れる量が減れば値段は上がる。毎日当たり前のようにアサリのみそ汁を飲めたのも昔の話。庶民的な存在であったアサリも次第に高級貝になりつつある。特に国産は貴重になってきた。もともと味は貝の王様といってもいいぐらいおいしい。うま味成分でもあるコハク酸を多く含み、他の食材にはない味わいが楽しめる。みそ汁が好きで、いろんな食材で作るが、アサリやシジミなど貝のみそ汁にかなうものはない。
パスタもアサリを使うと味がワンランクアップする。おすすめは、ボンゴレロッソ。アサリのトマトソースパスタだ。アサリをワインで蒸して取り出し、別に作ったトマトソースに加えると、火を通し過ぎずふっくらやわらかく仕上がる。蒸したときの汁も全部入れよう。トマトソースにはセロリを加えると、風味がアップ。トマトソースが絡まったアサリのおいしさといったら。
環境の変化や世界情勢によって当たり前に食べていた海の幸の価格が高騰する。それでも、買って生産者の皆さんに感謝したい。それが、未来の子供たちがアサリをおいしく食べられることにつながると願っている。
パパ料理研究家。昭和46年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。