魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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食育専門家・浜田峰子の魚で元気な未来!

2019年5月10日
Column #027

昔から鮫は身近な海の幸

鮫(さめ)というと、水族館で悠々と泳ぐ姿や怖い映画が印象的かもしれません。でも実はこの鮫、日本全国で漁が行われており、鱶鰭(ふかひれ)のほか蒲鉾(かまぼこ)やはんぺんなど、加工食品の材料として使われているのです。

平成29年の都道府県別の漁獲量は宮城県が1位ですが、神奈川県6位、東京都11位、千葉県13位と、関東でも多く水揚げされており、私たちの生活に根付いています。江戸時代から食用としてすでに利用されており、大きな鮫を担いで日本橋を渡る魚河岸の若衆の姿が浮世絵にも描かれています。

身はもちろん、ヒレは高級食材の鱶鰭に、皮も余すところなく使われていました。皮は鎧(よろい)のように硬く独特の凹凸があるので、古くから宮大工が材木を研磨するやすりとして使っていました。日本全国に残っている伝統的な木造の建物にも、鮫皮の道具が使われていたことでしょう。

また、刀の柄の部分に滑り止めとして装飾されるなど、実用的な使い方をされていました。江戸時代に入って、寿司(すし)がファストフードとして人気になり、薬味として山葵(わさび)が用いられるようになると、鮫皮のやすりからヒントを得て、山葵専用のおろしとして重宝されるようになりました。

私は日本で働く外国人や観光で日本を訪れた外国人に英語でおもてなしの和食を教える機会が多いのですが、この鮫皮のおろしの歴史について説明しながら、目の前でさっと山葵をすって添えると、皆さん目を丸くします。「鮫の皮を使うなんて日本の和食の調理道具はとてもナチュラルでサステナブル(環境に配慮し持続可能な状態)だ」と、とても驚き、喜んでくれます。

そして、合羽(かっぱ)橋(東京都台東区)の道具街へお連れすると、皆さん鮫皮のおろしをお土産に買って帰ります。実は鮫は昔から、私たちの日常にとても近い日本の海の幸なのです。

鮫皮の山葵おろし

浜田 峰子
はまだ・みねこ

食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。

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