魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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食育専門家・浜田峰子の魚で元気な未来!

2018年1月5日
Column #010

和食の魅力を「解釈」
英語で発信

私は調理師専門学校で「食育」や「食による地域活性化」などの授業をしていますが、実はもう一つ「英語」の授業も担当しています。英語といっても、文法や構文などではなく、「食のおもてなし」に特化した英語です。それも外国人を単に接客するのではなく、和食のすばらしさを伝えるための英語です。

なかなかそうした英語の教材がなく、完全オリジナルテキストを作成して教えています。日本の料理人として「五味」「五法」「五色」を英語で伝えることに徹底的にこだわりました。1年間の授業の総仕上げとして実際に外国人ゲストをお迎えして実習をしました。1年生は江戸前寿司(ずし)の食べ方を伝え、2年生は懐石料理を説明するという設定です。

「向附(むこうづけ)は、鮃(ひらめ)のそぎ造り芽ねぎ巻きでございます」「本日の強肴(しいざかな)は、半月大根と城南小松菜の柚香炊き合わせでございます」

日本料理の言葉は難しく、向附や強肴を読めない人も多いのでは。ましてやそれを英語で伝えようとすると、英語を話す前に日本人として日本の食材や食文化について深く理解しておく必要があります。

授業ではまず魚偏の漢字や懐石料理の順番、おもてなしの基本である千利休の七則などを学ぶので、最初はまるで国語の授業のようです。次に、和食がいかに食材を生かした調理法であるかを学びます。刺し身ひとつとっても平造り、そぎ造り、薄造り、糸造り、松皮造りなど魚の身の特徴に合わせた切り方があります。包丁も魚の大きさや切り方に応じてさまざまな種類があります。「cut(切る)」と一言で言ってしまうのは、もったいないほどの技です。単に言葉を置き換える「translate(翻訳)」ではなく、理解してきちんと伝える「interpret(解釈)」がとても大切だと考えています。

生徒たちも最終的には、料理人ならではの和食の魅力を英語で伝えられるようになりました。日本で料理を学ぶ若者には、海外に正しく日本の食文化を発信する義務があるように思います。そうしたことが日本の漁業の元気な未来を支えると考えるからです。

外国人ゲストに英語で和食の魅力を伝える生徒たち

浜田 峰子
はまだ・みねこ

食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。

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